住宅ライターのザ・パークハウス 松戸取材レポート

千葉県松戸市

建設地の水害危険度は?松戸市のハザードマップや浸水履歴などから調査

「ザ・パークハウス 松戸」の最寄り駅「松戸」駅は、商業施設が集まる利便性の高い駅ですが、一方で川が近い場所であるため、水害リスクの懸念があります。

建設地から400mほどの場所、東京都との県境には大規模河川の江戸川が流れており、北側に樋古根川(ひこねがわ)、南に新坂川と、近距離に小規模河川も流れています。

そこで、松戸市が発表しているハザードマップや水害履歴を元に、建設地周辺の危険度について調査を実施。
気象庁のデータや、松戸市役所の危機管理課、江戸川河川事務所への聞き取り結果なども含めてレポートします。

こちらの記事をまとめると……

建設地の浸水リスクは? … 河川の氾濫や過去最大量の降雨があった場合、浸水が想定されている地域

松戸駅の周辺を流れる河川は、最も大きいものとして、東京都(葛飾区)との間に利根川を本流とする一級河川・江戸川があります。
川幅約130m(建設地近く)、堤防の上はサイクリングロードとして、河川敷はグラウンド等として整備されており、観光資源としても活用されている大規模河川です。

その江戸川に注ぐ形で、同じく利根川水系の新坂川や樋古根川といった小規模河川が流れています。


▲マンション公式サイトより引用した地図。
駅からマンションへ向かう際は、新坂川という小規模河川を渡ります。

 

マンション建設地をピンポイントで見ると、標高約3.7m(※1)と高くはなく、海からは離れていますが川との距離が近いため、氾濫による水害の危険性があるのではないか、と思われる場所です。

そこで、松戸市が配布している水害ハザードマップ(洪水・内水・高潮・津波)を確認したところ、建設地ではそれぞれ以下のリスクが想定されていました。

【洪水】
想定最大規模降雨量(1000年に1度降るかもしれない雨)により江戸川が氾濫した場合は3m~5mの高さ、坂川・新坂川(中小河川)が氾濫した場合は0.5m~3mの高さまでの浸水

松戸市 江戸川洪水ハザードマップ
 
▲想定最大規模降雨(72時間に491mm)による江戸川の氾濫で、建設地は3m~5m(建物の2階部分まで)の浸水が想定されています。

 

松戸市 中小河川(坂川・新坂川)洪水ハザードマップ
 
▲想定最大規模降雨(24時間に690mm・こちらも1000年に一度レベルの大雨ですが、江戸川とは算出基準が異なります)による坂川・新坂川の氾濫で、建設地は0.5m~3m(建物の1階部分まで)の浸水が想定されています。

 

【内水】(大雨により排水が追い付かなくなることで発生する浸水)
国内過去最大規模の降雨で0.3m未満の浸水

松戸市 内水ハザードマップ

▲黄色(0.3m未満)やオレンジ色(0.3m~0.5m未満)の部分が、浸水が想定されている箇所です。
1時間あたり71mmの大雨(千葉特別地域気象観測所における史上最大雨量)では、建設地の浸水想定はないものの、隣接地域は0.3m未満の浸水が想定されています。

 

ちなみに、河川の氾濫による洪水の場合は「1000年に一度」の基準でしたが、内水氾濫については水防法での規定がないため、全国一律の基準は設けられていません。
そのため松戸市では、上記の「地域における史上最大の降雨」をハザードマップの条件としています。

「松戸市地図情報提供サービス(やさシティマップ)」では、さらに規模の大きな降雨の想定も見ることができますが、それによると、建設地は1時間あたり、105mmの雨(我孫子観測所における史上最大雨量)で浸水なし、153mmの雨(全国における史上最大雨量)では0.3m未満(歩道が冠水する程度)の浸水が想定されています。

 

【高潮】
江戸川の堤防が決壊した場合、0.5m~3mの浸水

松戸市は海から離れているため海水による被害は想定されていませんが、「過去に日本に来襲した最大規模・速さの台風が東京湾の最悪のコースを通過し、江戸川の堤防が決壊し、排水施設が機能しない状況下」において、江戸川の水が溢れることで、建設地は0.5m~3mの浸水が想定されています。

【津波】
想定なし

過去の浸水実績は? … 公開されている資料では、建設地の浸水実績はなし

上記のリスクは想定によるものですが、実際に建設地が過去に浸水したことがあるかを調べたところ、松戸市がホームページ上で公開している「浸水履歴一覧」にはリストアップされていませんでした。

調査できる範囲(平成18年度以降)では、浸水被害は発生していないということです。


▲松戸市が公開している平成18年度以降の浸水履歴一覧。
発災年月日や住所、災害種別(大雨や台風など)、床上・床下の種別などが記載されています。
市役所の危機管理課によると、平成18年度よりも以前のものは、一般には公開していないとのこと。

江戸川の対策 … スーパー堤防や調整池、雨水タンクなどの整備が進み、近年は氾濫していない

確認できる範囲で過去の浸水実績はない建設地ですが、ハザードマップによる想定はされているということで、江戸川、中小河川(坂川・新坂川)で実施されている水害対策、また、マンション独自の対策についても調査しました。

 

まず江戸川についてですが、国土交通省の河川に関する統計・調査結果、及び江戸川河川事務所が発表している「過去の洪水被害」によると、江戸川流域では堤防が決壊するような大規模な洪水は、昭和24年(1949年)以降発生していません。(※2)

昭和30年代から、堤防の改修が進み、現在までに20箇所のスーパー堤防(通常の約30倍の幅で洪水の際の越水破堤に対策する高規格堤防)の整備も進められた(※3)こと、また、調整池や雨水タンクなど、川だけに水を集めないようにする施設の整備が進められたことも一因のようです。

細かいところでは、透水性のある舗装を行い地中に雨水を浸透させる工夫や、森林など元から保水機能のある土地の無秩序な都市開発を制限。
こういった対策により、台風や大雨の際に江戸川に一気に水が流れ込む事態も以前に比べ減少したようです。

 

ちなみに、堤防の高さを江戸川河川事務所に問い合わせてみたところ、松戸駅付近では約11mとのこと。
江戸川の洪水の履歴を見ると、過去最高となった水位でも約8.5m。(※4)
かなりの高さまで堤防が築かれているようです。

中小河川の対策 … 江戸川に水を流す排水機の稼働で、洪水を未然に防ぐ措置が取られる

また、新坂川のような中小河川についてですが、江戸川河川事務所の方に聞いたところによると、江戸川のような大きい川と中小の河川が流れている場合、一般的には小さい川の方から先に氾濫することが多いそう。

ですから、建設地周辺で大雨が降った際は、新坂川や坂川、樋古根川の氾濫が先に懸念されることになりますが、大雨の際は「排水機」と呼ばれるポンプで水を汲み上げ、小さい川の水を江戸川に流すという措置が取られます。

この排水機の効果で、関東各地で最大降水量を更新した令和元年(2019年)10月の台風19号の際も、坂川流域で浸水被害は発生しなかったという調査結果が発表されています。(※5)
ちなみに、この時の江戸川上流の累加雨量(降り始めてからの総雨量)は300.3mmということですから、ハザードマップで想定されている「24時間に690mm」という雨はかなりのレアケースということが分かります。


▲マンション建設地の近くから江戸川の堤防に上がると見える、この水門のような施設は、樋古根川の排水機の放水部分(樋野口排水機場)。大雨の際には樋古根川の水がここから江戸川へ放水されます。
(樋野口排水機場 現地より約450m)

マンション独自の対策 … 内水氾濫想定よりも高い位置に建物を建設。出入口には止水板も設置

マンション単体ではどのような対策が取られるのかも、「ザ・パークハウス 松戸」のスタッフの方に聞いてみたところ、まず建物本体が地面から約37cm上げた位置に建てられるそう。

水害の発生割合としては、川が溢れる「洪水(外水氾濫)」よりも、排水が追い付かなくなることによって発生する「内水氾濫」の方が多いのですが、建設地の内水氾濫によるリスクは日本全国における史上最大雨量の降水で、30cm未満の浸水想定となっていました。
それよりも高い位置に建物が建てられるということです。

加えて、メインの出入口(エントランス、駐車場出入口、ごみ置き場出入口)には、水位の上昇に合わせて起き上がる「浮力起伏式止水板」も設置されるとのこと。


▲浮力起伏式止水板の参考画像。

 

また、1階共用部の防災備蓄倉庫に加えて、各住戸の玄関横にも、その住戸専用の防災備蓄倉庫が設置されるそう。
万が一在宅避難が必要になった際に、役立てられそうだと思います。

水辺のメリット … サイクリングロードや運動公園、花畑、バーベキュー場などレジャースポットとしての一面も

大規模河川があることはリスクのひとつではありますが、「暮らし」という目線で見るとメリットもあるもの。
開放的な河川敷の景観を楽しんだり、車の通らない真っすぐなサイクリングロードや、野球やサッカーができるグランド(運動公園)などが整備されている点などは、川沿いならではといえるでしょう。

例えばマンション建設地に近い江戸川の堤防の上は「水辺の健康エコロード」として、ウォーキングなどに適した遊歩道となっており、上流に向かって1.2kmほど歩くと「江戸川松戸フラワーライン」という花畑もあります。


▲広さは約2ha、春はポピー、秋はコスモスが咲き誇り、それぞれ開花の時期には「江戸川松戸フラワーライン春(秋)の花まつり」と題したイベントも開催されます。
キッチンカーやポニー乗馬、ステージイベントなどがあり、子連れの方を中心に約4,000人が集まる賑やかなイベントなのだとか。
(江戸川松戸フラワーライン 現地より約1,140m)

 

また、下流に約3km向かった所には下矢切スーパー堤防があり、バーベキュー場として利用できる場所も。

 
▲画像1枚目:下矢切のスーパー堤防。北総線の線路から少し下ったあたりに無料で利用できるバーベキューエリアが整備されています。
画像2枚目:下矢切スーパー堤防は菜の花や桜の名所でもあります。毎年3月上旬から5月上旬にかけて、黄色い絨毯のような菜の花が沿道を彩ります。
(画像1枚目・2枚目 下矢切周辺 現地より約2,920m)

 

また、江戸川だけでなく坂川も、松戸の桜の名所のひとつ。
「キテミテマツド」の南側にある「松戸神社」の周辺に河津桜の並木があり、ソメイヨシノなどよりも一足早い2月上旬から春らしい景色が楽しめます。


▲坂川の河津桜並木。見ごろの時期には夜間のライトアップもされるそう。
(松戸宿坂川の河津桜並木 現地より約890m)

 

上記で紹介したスポットは、いずれもマンションから約3km以内の距離です。

▲江戸川や坂川沿いに複数のレジャースポットがあります。

 

駅に近い場所でありつつ、これだけの開放的な景色や、スポーツやバーベキュー、イベントなどが楽しめ、公園代わりに利用できるスポットが身近というのは“川が近い”立地ならではのメリットといえるでしょう。

 

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こうして見ていくと、マンション建設地は「激しい雨(気象庁の基準では1時間あたり30mm~50mm)」レベルでは浸水は考えにくい場所ということになりますが、ハザードマップ等の防災情報についてはご自身でも調べてみることをお勧めします。

現地周辺は、大雨の場合の水害の懸念が残る一方で、行政による複数の対策が行われていたり、水辺ならではの自然環境が生活の質向上や子育てにプラスになることもあるといえそう。
自分にとって何を優先したいか多角的に見ていくと、納得感の高い住まい選びができるのではと思います。

※掲載の写真は2022年12月に撮影したものです(参考写真を除く)。記載の距離は、現地からの地図上の概算です。徒歩分数は80m=1分として算出し、端数は切り上げています。
※1:国土地理院地図参照
※2:国土交通省「江戸川の主な災害」・江戸川河川事務所「過去の洪水被害 江戸川」より
※3:江戸川河川事務所「高規格堤防 全体の整備マップ」より
※4:江戸川河川事務所「過去の洪水被害 江戸川」より
※5:江戸川河川事務所「令和元年10月台風第19号(令和元年東日本台風)出水概要」より
熊谷実津希

住宅ライター
熊谷実津希

「知りたいことは、現場に行って調べる!」がモットーの住宅・不動産専門ライター。二児の母にして分譲マンション購入経験あり。美味しいお店を発見する眼力にも自信あり!?

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  • 情報は掲載日時点のもので、現在は対象の住戸が販売済みになったり、周辺環境等が変わっている場合もあります。