住宅ライターのザ・パークハウス 松戸取材レポート

千葉県松戸市

松戸市の子育て環境を調査【未就学児編】 ~「共働き子育て」で評価される理由とは?

今回から2回にわたって、松戸市の子育て環境についてレポートします。

ひと口に「子育て環境」といっても、その要素はさまざまですが、今回は「共働き世帯が子育てしやすい街かどうか」を調査。
特に市区町村によって状況が異なる、保育園や学童の状況を中心に調べていきます。

松戸市の子育て事情については、市のHP等でも大きくPRされているように、日本経済新聞社と日経xwomanが発表する「共働き子育てしやすい街ランキング」において、2020年 と2021年の2年連続で全国総合第1位、2022年も第2位との評価がされているよう。(※1)

同ランキングは、全国180の自治体を対象にした調査(※2)ということですから、全国的に見て松戸が「共働きが子育てしやすい街」と評価されたことになりますが、具体的にはどのような点が認められたのでしょうか。

詳しく調査してみました。

こちらの記事をまとめると……

全国に先駆けて0~2歳児の対策を進め、7年連続で待機児童ゼロ。4月でなくても、いつでも入所できる

共働きでの子育て環境を考えるうえで、大きな課題となるのが、「子どもの預け先」。

ほとんどの家庭で保育園を利用することになると思いますが、まず「保育園に入りやすいか」、続いて「子どもが病気になった際の預け先があるか」は、多くの保護者にとっての悩みの種であり、同時に、自治体によって状況や手厚さが異なる点でもあります。

自治体の「子育て支援策の充実度」を測るうえでも欠かせない要素になっており、冒頭の「共働き子育てしやすい街ランキング」の評価指標にも入っています。

 

ではまず、「保育園への入りやすさ」について見ていきましょう。

これを判断する基準のひとつに「待機児童数」(保育が必要な状態なのに、保育園に入れない子どもの数)があり、毎年、市区町村や都道府県別にその数が発表されています。

待機児童問題は、2010年頃から表面化しはじめ、2016年頃には社会問題としてニュースでも大きく取り上げらました。
現在は、小規模保育園の認可化と増設(詳しくは後述します)により徐々に改善されつつありますが、今なお100人超の待機児童を抱える自治体もあり、厳しい状況が続いているようです。

松戸市はどうなのかというと、2016年から7年連続で「待機児童ゼロ」となっています。

私自身、ちょうど待機児童が厳しかった頃に子どもの保育園探しをしていた経験がありますが、全国的に過去最大の待機児童を抱えていた時期に、既にゼロを達成していたというのは客観的に見ても先進性があったのではと思います。


▲松戸市の待機児童数の推移。2012年の126人がピークで、その後減少して、2016年からはゼロを維持しています。
全国や千葉県全体の待機児童数のピークは2017年ですが、その頃松戸市では既に解消できていたということです。(※3)

 

全国的に待機児童数が大幅に減少した大きな理由は、全体のおよそ9割を占める0~2歳児のための「小規模保育施設」が増設されたこと。

2015年にそれまで認可外だった小規模保育施設が国の認可施設となったことから、施設数と利用者数が徐々に増え、待機児童解消に繋がったのですが、松戸市はその対処が早く、また、継続的に実施していたために、「待機児童ゼロ」を早期に実現、維持できているようです。

 

近年は「待機児童ゼロ」を実現する自治体は増えてきましたが、一旦ゼロになったものの、その後利用希望者が増え、また待機が微増してしまうケースもあります。
そんななか、「ゼロを維持」しているのはなかなかすごいと思うのですが、松戸市では「入所したい時にいつでも入所できる(※4)」体制の維持のため、2021年度から2022年度にかけて小規模保育施設を14施設増設したそう。

施設の数が多いため、松戸市内の小規模保育施設の入所率は約80%、つまり「空きがある」状態だそうです。

 

私はこれまでにさまざまな自治体の保育園事情を調べてきましたが、待機児童数が少なかったりゼロであったりしても、0~2歳児は保育園の定員にあまり余裕はなく、「年度の途中からの入所は厳しいけれど、4月入所ならどこかしらには入れる」であったり、「大きなマンションができたりして一気に子どもが増えたら、また定員をオーバーして待機が出てしまうのでは」と危機感がある自治体が多い印象です。

松戸市が、「待機児童ゼロ」を達成したというだけでなく、多くの働く保護者の希望である「入所したい時にいつでも入所できる(=4月でなければ保育園に入れないからと、育休の時期を調整する必要がない)」を維持しているというのは、なかなか評価できるポイントだと思います。


▲小規模保育施設は広い土地を必要とせず、ビルの中などにも作ることができるため、比較的スピーディに開設できるもの。駅ナカや駅前など、利便性の高い場所に設置できるという利用者側のメリットもあります。

 

また、小規模保育施設だけでなく、園庭のある保育園が多いのも松戸の特徴。
園庭保有率は「保育の充実度」を計る指標のひとつで、高いほど良いとされます。

松戸市の認可保育園の園庭保有率は77.9%。
近隣の流山市(75.6%)と同程度、同じく近隣の市川市(51.0%)や東京23区の平均(39.8%)と比較すると高い値となっています。(※5)

園庭保有率は、都市部にいくほど下がる傾向にありますが、松戸は都心に近く、ほどよく商業化されている街であるのに、この数字になっているのは好感が持てます。

保育士の労働環境改善などで、保育の“質”も確保

保育士の確保や労働環境改善など「保育の質」の確保に努めている点も評価されているようです。

松戸市では、市内で働く保育士に対し、給与とは別の、市独自の手当てを支給する、家賃補助や奨学金返済支援金などのサポートを実施。

児童数に対する保育士の数も、国よりも手厚い基準を採用しており、例えば4~5歳児は国基準では児童30人につき保育士1人ですが、松戸市の場合は20人に1人。(東京23区には、このような基準を独自で採用している区はありません)
1クラスが30名の保育園であれば本来は担当保育士が最低1人のところ、松戸市なら2人以上付くことになります。

 

一般社団法人日本子育て支援協会が主催する「日本子育て支援大賞2021」において、松戸市が自治体・プロジェクト部門で受賞した際も、「保育士・幼稚園教諭の確保・育成のための施策が群を抜いている」と評価されたそうです。


▲松戸市の保育士確保のためのパンフレット。
松戸市で働く保育士さんからは「園全体でバックアップ体制を取っているので、お休みが取りやすい」「クラスの隔たりなく保育士全員で子どもを見ているので、一人ひとりの成長や発達を日々感じられる」といったコメントも。

病児・病後児保育施設の多さにも注目。松戸駅の西側にも施設がある

続いて、「子どもが病気になった際の預け先があるか」を見ていきます。

 

「病気」というと、風邪や感染症など大人でも辛いような症状を想像しがちですが、赤ちゃんは生後半年を過ぎた頃からしょっちゅう熱を出します。
母体からもらった抗体が切れ、赤ちゃん自身の免疫が未熟な期間だからといわれており、個人差はあるものの、2歳を過ぎる頃までは「今月は休まず登園できた」なんて月の方が珍しい、ということも。

通常、保育園は、37.5度以上の発熱や嘔吐、一定の感染症にかかっている場合は子どもを預かってもらえないため、
場合によっては、子どもが回復するまで1週間近く休まなければならないこともありますが、それが毎月ともなるとなかなか大変。
どうしても外せない仕事の日に限って子どもが体調を崩すこともありますから、病中や病後(回復期にあるが休ませたいとき)の子どもを預かってくれる施設が必要になります。

 

それが「病児・病後児保育施設」で、首都圏であればほとんどの自治体に1箇所は設置されています。


▲病児・病後児保育は、病気の子どもを預かってくれるだけでなく、体調の確認や投薬を医師や看護師が行ってくれるので、保護者にとって安心感のある施設です。

 

病児・病後児保育施設は働く保護者にとって必要なものである一方で、設置が義務付けられているわけではないため、整備が遅れているのが現状です。

東京23区で見てみると、区によって設置数にかなり開きがあり、1という区(渋谷区、墨田区)もあれば11という区(世田谷区)も。平均では4.7です。

松戸市は市内に5箇所の病児・病後児保育施設があり、市全体の保育園児数との割合も、23区の平均や、近隣の流山市、市川市などよりも少ない、つまり利用がしやすい数値となっています。(※6)


▲流山街道沿いにある病児・病後児保育施設「ラポールマツド」のパンフレット。
市内5箇所のうち、松戸駅近くの施設は駅西側のこちらのみ。近くにあると安心感がありそう。

共働き世帯でも「幼稚園」に預けるという選択肢。送迎ステーションもあり、通いやすい工夫

冒頭で、松戸市は0~2歳児のための小規模保育施設の数を増やしたと書きましたが、では3~5歳児になったらどうするのかというと、通っている保育施設と連携している保育園や幼稚園が複数あり、そちらに進級することになるそうです。

保育園は3歳児から定員が増えますし、幼稚園(3歳児~5歳児のための教育施設)に通っても良いということで、市役所子ども部保育課にヒアリングしたところ、「どこにも進級できず待機になることは、現状ほぼない」そう。(ただし、特定の園の確約はできないとのこと)

ここで「珍しい」と思ったのは、連携している進級先の選択肢が、保育園だけでなく幼稚園もあることです。

 

一般的に幼稚園は、保育園に比べてお迎えの時間が早い(11時~16時頃)ことから、フルタイムで共働きの家庭は利用しづらいもの。
ですが、松戸市では、幼稚園での預かり保育(通常は14時ごろまでのところ、延長して18時くらいまで預かってもらえたり、長期休みにも保育を実施してくれるサービス)や費用の助成を推進。

保育園のような預かり時間で、幼稚園の教育カリキュラムを体験できるということで、小規模保育施設から幼稚園へ進級者は年々増えているそうです。(※7)


▲保育園は厚生労働省管轄の「児童福祉施設」ですが、幼稚園は文部科学省所管の「学校教育施設」。
「義務教育及びその後の基礎を養うもの」という目的があることから、幼稚園の方が教育的なカリキュラムが充実する傾向にあります。
課外活動として、通常保育の後に学習や体操、音楽、英語、書道や茶道といった習い事のような活動を実施している園も。

 

また、「送迎保育ステーション」というサービスも実施しており、これは近年取り入れる自治体が増えてきているものですが、駅前に「送迎ステーション」という施設を設けて、保護者はそこまで子どもの送り迎えをすれば良い、というもの。

子どもが通う幼稚園へは送迎ステーションのスタッフがバスで送り届けてくれて、お迎えも後も、保護者が迎えに来る時間までステーション内で預かっていてくれます。

元々は「便利な場所にある保育園ばかり埋まってしまい、交通アクセスの悪い場所にある保育園には空きがある」というアンバランスさを解消するために作られたサービスで、多くの自治体で保育園専門の運営になっていますが、松戸では幼稚園を利用できるようサポートしています。

幼稚園は独自に園バスを運行させていることが多いですし、前述のとおり基本的には早い時間にお迎えに来られる家庭が利用する施設なので、送迎ステーションのようなサービスは実施されないのが一般的。

松戸市はここをサポートして、「共働き世帯でも、幼稚園を利用しやすいように」工夫しているということですね。なかなか画期的なサービスだと感じます。


▲「送迎保育ステーション」のイメージ図。
幼稚園が自宅や駅から離れた場所にあっても、保護者の送迎は駅前まで。コワーキングスペースを設けたステーションもあるそうです。
松戸駅の西側にも1箇所送迎ステーションがあります。(利用には費用がかかります)

 

教育を支援するパンフレットを配布するなど、さまざまな面で子どもの教育をサポートしているようです。

背景には、「子育て支援は単なるコストではなく、未来への投資」という考え方があるよう。
その考え方に基づいて、「施設の整備」というハード面と、「保育の質や教育」というソフト面の両方で、共働き世帯の子育てサポートを充実させた結果が、全国トップクラスの手厚さに結びついたということだと思います。

実際に働きながらの子育てを経験した立場から見ても、ポイントを抑えた対策がとられていると感じました。

 

いかがでしたでしょうか。
次回も、松戸市の子育てに環境ついて。小学生になってからの視点で調べてみたいと思います。

※1:日本経済新聞社・日経xwoman発表「共働き子育てしやすい街ランキング2022 総合編第2位」
https://woman.nikkei.com/atcl/column/22/112200009/122300002/
※2:調査対象…首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)、中京圏(愛知・岐阜・三重)、関西圏(大阪・兵庫・京都)の主要市区と
全国の政令指定都市、道府県庁所在地、人口 20 万人以上の都市の、計180自治体 回答数:165自治体 回収率:91.6%
※3:厚生労働省、千葉県HP、松戸市HPから各年度4月1日時点での数値を集計
※4:松戸市報道資料「小規模保育施設から幼稚園へ ~待機児童対策・7年連続国基準待機児童ゼロ~(令和4年3月28日)」参照
※5:保育園を考える親の会監修「100都市保育力充実度チェック」参照
※6:保育園を考える親の会監修「100都市保育力充実度チェック」より、1病児・病後児保育施設あたりの認可保育園利用者数を算出。東京23区の平均2,544人、流山市2,393人、市川市2,696人に対し、松戸市は1,786人。
※7:松戸市「ようちえんGUIDE2022」より
熊谷実津希

住宅ライター
熊谷実津希

「知りたいことは、現場に行って調べる!」がモットーの住宅・不動産専門ライター。二児の母にして分譲マンション購入経験あり。美味しいお店を発見する眼力にも自信あり!?

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